君が見せてくれた、私の世界
「綺麗だな。」


「……。」



想世架を乗せた車椅子を押して、河原近くの桜並木を歩く。


嬉しそうに微笑む想世架を見つつ、俺は…複雑な思いでいっぱいだった。
いつから、お前はこんなに軽くなったんだよ…。
他の人よりも小柄だった想世架は、もっと小さくなった。

俺に触れる手も、指も、すっかりやつれていた。
なにより、車椅子に乗せるからと抱き上げた時の腰の細さ。


それのせいで嫌な事ばかり想像してしまう。
想世架は死なないのに。



「……ち…ぁ……。」



「ん?どうかした?」



俺の考えを振り払うかのように、想世架が声を上げた。
車椅子を止めて想世架の前にしゃがみ込むと、想世架は俺の頭をゆっくりと撫でた。



「……わ、ぁ………て……?」



“笑って”

きっと想世架はそう言ったんだろう。
車椅子からは、俺の顔は見えないはずなのに…。


こんな時まで、俺のことを気にかけてくれるんだな……。
やっぱり、お前は優しいよ。
誰よりも優しくて…可愛い。






< 277 / 312 >

この作品をシェア

pagetop