君が見せてくれた、私の世界
想世架の言葉に、涙が出そうになる。

なんで、お前なんだろう。
なんでお前だけが…苦しまなきゃいけなかったんだ。

お前じゃなくてもいいじゃないか、何度もそう思ったよ。



「……ありがとな。」



俺が笑えば、お前は笑ってくれる。
笑えば、笑い返してくれる。
ただそれだけのことなのに。

今の俺にとったら、嬉しくて仕方がない。



「少し、休憩するか。」


「………。」



小さく笑ったのを肯定とみなして。
桜の木の袂に車椅子を止め、俺の腕の中に想世架を閉じ込める。

そのまま俺は、木の幹にもたれかかった。



「綺麗だな。」



桜の木の下から見える景色は、俺が今まで見てきたものの中で一番綺麗だった。


河原に浮かぶ、桜の花びら。
ここの水は透き通っているから、薄桃色の桜の花びらがくっきりと見える。


風がなびく度に、桜の花びらが舞い上がり青空の下でひらひらと飛んでいく。




「……き…れ……い……」




嬉しそうな想世架。


風が舞う度に、想世架のさらさらとした綺麗な黒髪が揺れる。
髪にキスを落として、腕の中の想世架にもキスを落とした。




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