君が見せてくれた、私の世界
「……?」



キスを落とすと、いつもは恥ずかしそうな顔をする想世架が今日は。

じっ…と俺を見つめていた。



「………す……き…」


「……!」



幸せそうに、口角をあげる。
今の想世架に“好き”と言ってもらえるとは思っていなかったから、不意打ちを食らった気分だ。


驚いた俺の顔を見て、また嬉しそに微笑むと…そっと俺の頬に触れた。



「……し、…あ……せ…、?」


「当たり前だ。
俺はお前といられて、幸せだよ。」


「……わ…た…し…も……。」



頬に触れている想世架の手に、自分の手を重ねる。


どんなにやせ細っていても、温かい手。
俺に触れてくれた手。
優しく、俺を包んでくれた手。


お前が生きていることを、実感させてくれる温かさが心地いい。


いつからか、お前の体温が心地よくなっていたよ。
俺が唯一、安心できる温かさ。

想世架の温もりだけが、俺の心を落ちつかせてくれていた。


これからも、ずっと……触れていたい。





< 279 / 312 >

この作品をシェア

pagetop