君が見せてくれた、私の世界
「九条先生…。」


「想世架ちゃん気分はどう?」


「…大丈夫です…。」



担当医の九条先生。


アメリカの病院で紹介してもらって、実は3歳までこの先生に診てもらってたんだって。


小さくて覚えてないけどね。


定期検診で初めて会ったんだけど…優しくて、穏やかな先生。



「なら良かった。
…お母さん、少しお話が。」


「は、はい。
…そよゆっくり休んでなさいね。」



先生とお母さんが病室を出ていくと、また部屋が静かになった。


差し込む夕焼けが眩しい。



「……もうやだ…。」



せっかく楽しみにしてたのに。


壁にかけられた、さっきまで私が着ていたワンピース。


浮かれ気分だったのに…こんな病衣。


1人になると自己嫌悪が出てきちゃうから、早くママ来ないかな…。


…でも、多分そう早くは戻ってこないと思う。


なんとなくだけど、いい話じゃなさそうだったから。




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