クールな御曹司の一途な独占欲



メインのフォアグラのソテーが乗ったお肉にナイフを通しながら、私はそれに答えた。


「最初は秘書ではありませんでした。ごく普通に新卒で入社し、総務部で働いていたんです。そのとき営業部に、総務部から事務処理をするスタッフが現場に欲しいという要望があり、私は一人で営業部に派遣されました。・・・そのときの営業部長に秘書のように扱われたことが始まりです。それから噂を聞き付けた専務、副社長も私のことを指名して秘書の真似事をさせたんです。ついには正式に秘書として社長にも」

「何だか想像できるねぇ、営業部に何でもやってくれる紅一点のキミが来たら、そりゃあ引っ張りだこになる」

「でも、たしかに秘書の仕事は自分に向いています。楽しいですから」


私の「楽しい」という言葉を聞くと本部長はパッと顔を上げ、まるで子どものような笑顔を見せた。

今まで彼は嘘くさい笑顔ばかりだったせいか、その表情にドキリと胸が鳴った。


「楽しいの?」

「ええ。お一人お一人、私に求める働きは違います。秘書としていい働きをするには相手のことを知ろうとしなければなりません。こんなにも、人と信頼関係を築くことが結果につながる職業はなかなかありません。とてもやりがいがあります」


しかしその答えに本部長はへそを曲げてしまった。


「それは妬けるな」

「・・・何がです?」


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