クールな御曹司の一途な独占欲



「あの、」

「・・・香坂さん」


いつもより低い本部長の声が脳に響く。

やけに顔が近くにあって、ふわりとした髪からは甘い香りがした。


「僕と付き合おうよ」


そう言ったと同時に、人差し指と親指でアゴを持ち上げられていた。

体はすぐに熱くなり、そこから逃れようとしたけれど、アゴを掬い上げられるとそれを容易には振り払えないのだと思い知った。


「な、何を言ってるんですか、」

「何も変わらなくていい。僕は本部長でキミはその秘書、そこに実は恋人だということを付け加えるだけでいい」

「どうしてそんなこと、」

「だってそうしないとキミは彼を見捨てられないデショ」


───っ

そう言われたとき、本部長の言ったことがしっくりきすぎて驚いた。

目を見開いて固まってしまった私の耳元に唇を寄せて、本部長は続ける。


「僕が理由をあげるよ。そのどうしようもない彼から思い出の部屋を取り上げなきゃならない理由を。キミは僕の恋人だ。僕は相当嫉妬深いから、前の彼氏にキミが援助しているなんてことは耐えられない。キミは僕のために仕方なくその彼を見捨てなきゃならないんだ。そうすれば酷くない。今の恋人の要望なんだもの。ね、悪くないデショ?」

「本部長・・・」


耳の奥まで振動していくような響きのある囁きは、催眠術のように私を狂わせていく。

全て私のことを見抜いている。


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