クールな御曹司の一途な独占欲
本部長は笑顔のまま、突然私の手首を掴んだ。
あまりにも突然のことだったので、こちらの笑顔は消えてしまった。
「・・・何でしょうか、」
「分かってると思うけど、送金を止めたことは彼に伝えなくていいんだからね」
「え?どうしてですか?」
私は当たり前のように今夜にでも牧田さんにメールをして、送金を止めたから部屋を出るよう説得するつもりでいた。
私の反応に本部長には困ったような苦い顔をしてしまった。
「どうしてですかって・・・じゃあ逆に、どうして送金を止めたことを伝える気でいたの?」
「だって早く伝えないと彼が今までの2倍の家賃を払うことになってしまうじゃないですか。きっとまた私から送金があるものと思っているでしょうから、あっちも困ると思うんです」
「ほら、そういうキミの優しいところに、男はつけ込むのさ」
本部長の長く綺麗な人差し指が、私の唇を塞いだ。
「ん・・・本部長、ちょっと、」
人差し指は離されたけど、代わりに親指を下唇にぴとりとくっつけられて、ふにふにと遊ばれる。
「ワガママを言えば言うことを聞いてくれるんじゃないかって思っちゃうよ。こんなに心配してくれるんだから、きっと粘り続ければイケるって」
「本部長、」
「僕も勘違いしそうになるよ。このままキミを押し倒しても受け入れてくれるんじゃないかって」
「だめに決まってます!」