クールな御曹司の一途な独占欲
親指で唇を遊ばれている間は息を止めていたからか、本部長の手から逃れた後は少し息が上がってしまった。
胸も痛いくらいドキドキしている。
この人のすることはよく分からない。
思い切り体を離したあとで本部長の顔を見ると、私が「だめに決まってます」と言い放ったことに少しムッとしているように見えた。
「あ・・・すみません。いえすみませんと言うのも変ですが、今は仕事中ですから駄目に決まってますよ」
「その言い方も駄目だね。仕事中じゃなければ良いように聞こえるけど?」
「・・・」
仕事中じゃなければ・・・
「・・・だ、だめですよ、それでも」
「・・・たまんないね香坂さん、その押せばイケそうなかんじ。分かるかな?前の彼もキミのことまだそういう風に思ってるんだよ。だから黙っていればいい。アンタがどうなろうと知らないよ、てことを態度に出さなきゃ」
この一連のスケベなやりとりは結局それを言いたかったんだ、とようやく私は納得した。
「分かりました。その通りにしてみようと思います。本部長、お気遣いいただきありがとうございます。・・・お話は変わりますが、そろそろ会議の時間ですのでご準備をお願いします」
「切り替え早すぎない?」
「会議は待ってはくれませんので」