クールな御曹司の一途な独占欲
ガチャンと受話器を置くと本部長がひょこひょこと寄ってきた。
「誰だった?」
「受付の松島さんでした」
「あーポニーテールちゃん!え、で、なんで留守って言っちゃったの?いるじゃん僕」
「嫌な予感がしたので。取り次ぐと本部長がお仕事をサボるような予感が」
「香坂さん厳しい・・・鋭い・・・」
ずっとこんな調子のやりとりをしてばかりだけれど、本部長は今年でもう35歳だ。
たいして変わらないが、32歳の私にすがりついていい年ではない。
初めて会ったときの冷たく突き放されたことを思い出すと、よくもまあこんな風になってしまったものだ。
あのときの本部長のほうが数段格好良かった。
そのほうが外見にも合っている。
少し日本人離れした美形で、嘘くさい笑顔でもとても華があり、ワイシャツからでも分かるスマートな筋肉のギャップに社員の誰もが顔を赤らめた。
黙っていればまるで俳優のようなのに。
ファーストコンタクトのときのニッコリ笑顔で毒を吐かれたときが一番ときめいたが、それからは残念になる一方だ。