クールな御曹司の一途な独占欲
episode3
一昨日はあの部屋の家賃の引き落とし日だった。
引き落とし日に送金されるようになっていた設定もこの間無事に取り止めになり、牧田さんもきっと一昨日それに気がついたと思う。
ひっきりなしにきていた電話もメールも、その日からやんだのだ。
今日は本部長より早く出社し彼のコーヒーを淹れた。
ドリップはゆっくりと時間をかけて。
本部長は数分の狂いもなく決まった時間に出社するため、コーヒーは逆算して最適な時間に出来上がる。
「本部長、おはようございます」
「おはよう」
本部長が出社して席につくと、最高に出来のいいコーヒーをデスクに置き、用意していたお菓子の箱を出した。
「先日のお礼です」
「えぇ、いいのに。恋人として当然のことをしただけだよ」
「・・・まだ続いているんですか、それ」
別にこちらの方は偽恋人の肩書きがついたままでも不都合はなかった。
どうせ本部長は誰にも言わないし、私が牧田さんと関係を絶つために協力してくれた以上のことはなさそうだったし。
こちらも特に恋人をつくる予定もないから、今は私の恋人の枠に本部長が居座っていても問題ない。
「恋人ってそんな数日で別れるものじゃないデショ?やめたいなら香坂さんの方から切り出してね、僕とお付き合いはできませんって。僕からはキミのこと振らないから」
「いえ、私も特には・・・」
「僕のこと好きになった?」
「・・・いえ、そういうわけでも」