クールな御曹司の一途な独占欲




「あ、待って。やっぱりダメ」


──え、


「ダメ、ですか?」

「うん。2時に土田社長との挨拶があるデショ?僕は初対面だけどキミは面識があるんだから、その時間は一緒にいてほしいな。その方が先方も気が楽だろうし」

「え、あぁ、ええと・・・」

「午前中のやることって何?良ければそっちを動かすから、午後は予定を入れないでもらえるかな?」



──だめ、か。

本部長にこんなことを申し出た理由は、まさしくその土田社長との面会に同席したくないからだった。

実は銀行から連絡なんてきていないし、午前も午後も本部長について回る以外の予定なんて入っていない。

私はただただ牧田さんに会いたくなかったのだ。

土田社長にくっついてくるであろう彼が一体私にどう接してくるのか、全く予想がつかない。

連絡をとらなくなって、送金も止めて、そして向こうも私に連絡することを止めた。

それが本当に円満解決となったということならいいのだけど、彼が腹のなかにどんな気持ちが渦巻いているのかは私には想像できない。

そんな中で明日、仕事の相手として顔をあわせたら、私はどうすればいいのか。


正直会うのが怖いのだ。


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