クールな御曹司の一途な独占欲
しかし本部長に断られてしまったのだから仕方がない。
腹をくくって彼と顔を合わせるしかないだろう。
「分かりました。私のほうは別に明日でなくても大丈夫なので、銀行に連絡してみます」
「うん。ゴメンね、大丈夫?」
「・・・本部長も土田社長とは初対面ですし、ご不安ですよね。大丈夫ですよ、私も心配なのでやっぱりお側にいることにしますから」
心の中では牧田さんと会うことが決定的となり憂鬱な気分となったが、本部長には笑顔を見せた。
すると彼はふわりと私の腰を引き寄せてきた。
「ほ、本部長?」
温かい本部長の手の温度が、スーツスカートの布越しに伝わってくる。
動きに品があるせいで、セクハラとは感じない。
「今のすごく可愛かった。心配なのでお側にいます、って。すごくイイ」
「本部長・・・またそういうこと言って・・・」
座ったままの本部長に引き寄せられた私は、バランスをとるために彼の両肩に手を置くしかなかった。
控えめに触れても彼はびくともしないから、もう少しだけ力を入れて掴まって、彼の肩に体重を委ねてみる。
「いい香りがする」
「なっ、」
本部長はそのまま私の腹部に顔を埋めてしまいそうな勢いだったので、私はさすがに距離をとった。
「離してくださいよ、もう、」
「駄目だねぇ、キミとこうして二人でいると、ついつい手が出ちゃうヨ」
「出、さ、な、い、で、く、だ、さ、い」
この人がこんなにエレガントで清潔な香りがしないただの男だったのなら、ここで力いっぱい張り倒しているところだ。
本部長に触れられることは、女に生まれた者ならば誰も拒否することはできないのではないかと思う。