クールな御曹司の一途な独占欲
次の日になってみると、一時間ごとに時計を確認してしまった。
2時まであと何時間、と。
元恋人との面会をこんなに恐怖に感じたことはない。
きっとそれは私が今回初めて別れた後で元恋人を突き放すというようなマネをしたからだと思う。
「なんだかそわそわしてるね」
「え、」
本部長もそんな私の様子に気づいているようだった。
仕事は抜かりなくやっているはずなのに、本部長は本当に鋭い。
女性の様子にすぐに気づくあたり、彼は女性経験が豊富なんだろう。
「何でもありません。もう2時になりますね。私、受付でお迎えしてきますので、本部長は応接室でお待ち下さい」
「うん、わかった」
エレベーターを一人で降りて受付付近に立って待っていると、自分の心臓の音が大きくなっているのが分かった。
受付にいた松島さんが「誰が来るんですか?」とくりくりとした瞳で聞いてきた。
「土田社長が今から来るんです。本部長あてに」
「ホントですか?ねえねえ香坂さん。土田社長と一緒に来る牧田さんって素敵じゃないですか?私すごくタイプなんです。すっごく紳士なカンジで」
彼女はなんで牧田さんの名前を知っているのかと眉をひそめた。
私と付き合っておきながらあの人は受付嬢にも媚を売っていたんだろうか。
別れているんだからもう関係ないけれど、あの異常な執着も本人にとっては軽いものだったのかもしれない、それなら良かった、そう思った。
「そう、ですかね」
「あ、来ましたよ!」