クールな御曹司の一途な独占欲
本部長は両手で顔を覆って、デスクに沈み込んだ。
「フレンチですよ。お好きではなかったですか?」
「うん、好きだよ、もう感動しちゃったよ何そのサプライズ。なんでキミってそんなにデキる子なんだろうねぇ」
「・・・もう"子"という年ではありませんが」
本部長のあの頑なな態度をどうやってここまで懐柔させたのか、それは私の地道な努力だった。
彼が仕事に集中できるためにはどんなことができるか、必死に考えて一つずつ実践していっただけ。
やがて、じわじわと彼は私の淹れたコーヒーを手にとって、私に予定を聞いてくるようになった。
そして今はもうこの有り様。
さすがに私も、ひと月でこんな、飼い犬のようになつかれてしまうとは思ってなかったけど。
「で、午後は役員会議のあとでこちらの書類に目を通して本部長印を押していっていただければ終わりです。以上になります」
「わかった。じゃあ、受付嬢の松島さんにもう一度内線をかけてもいい?」
私は眉を寄せた。
「・・・私に許可をとる必要はありません。申し訳ありません、何か大事な内容だったのでしょうか」
「折り返さないと取り次ぐ役目のキミの信用に関わるデショ?」
「も、申し訳ありません。先ほど取り次ぐべきでした」