クールな御曹司の一途な独占欲
しかし本部長はギョッとしたように狼狽えた。
そしてパッと手首を離してくれた。
私が涙を見せるのは初めてだったからかもしれない。
私はすぐに指の腹で目尻の涙を拭いて、ついでにまだ目の中にある涙も拭い去ろうとゴシゴシと擦った。
「すみません、本部長。涙が出てきてしまって、」
「・・ごめん、言いすぎたよ」
「いえ、本部長の言うとおりです。・・・仕事中に余計な心配をかけてしまうような気がして、黙っていたのですが。私の判断ミスでした」
本部長は私をリビングのソファーに誘導して座らせると、自身もその隣、すぐ近くに腰をかけた。
もう無理やり手を掴んだりはしない、優しい仕草になっていた。
「ごめんね。乱暴なことをしてしまった」
「いえ・・・」
「でも我慢ならなかったんだ。キミの昔の恋人の顔なんて、僕は見たくなかった」
「す、すみません、」
「だって想像できちゃうデショ?・・・キミが誰にどんな風に抱かれたのか、とか。こっちは嫉妬でどうにかなりそうだよ。僕はまだキミを抱いていないんだから」
(──っ)
斜め上の言い分に、私は体の熱が上昇していった。
本部長がまるで恋人みたいなことを言うから。