クールな御曹司の一途な独占欲








翌朝出社したのは随分と早い時間だった。

夜は寝付けなかったが、本部長が来る前に色々と気持ちを建て直したいと思ったのだ。


「あ、香坂さん。昨日は大丈夫でした?」


受け付けの松島さんも今着替えを済ませて降りてきたようで、すれ違った私に声をかけてきた。


「昨日、ですか?」


牧田さんとエントランスを出ていくところを見られたけれど、特にそこだけを見られても怪しい場面ではなかったはずだ。

不思議に思って首を傾げると、松島さんは続けた。


「一応、森下本部長が会議を終えられた後に私から内線を入れておいたんですよ。香坂さんが牧田さんに呼び出されて一緒に会社を出ていきましたよ、って。そしたら本部長血相変えて追いかけて行ったから・・・」


本部長が・・・?

てっきりあの場に居合わせたのは偶然だったと思っていた。

本当は私のことを心配して追いかけてくれたんだ。


「松島さんはどうして、本部長に内線を?」

「だって怪しいですよね、牧田さん。忘れ物を取りに取引先に戻ってきて秘書を呼び出すなんて。普通は来る前に連絡を入れるものですよ。なんだか香坂さんも困っているように見えましたし、念のため。お節介でした?」

「・・・いえ、助かりました」


松島さんがこんなに仕事ができる人だということを知らなかった。

ペコリと頭を下げてから、エレベーターへと向かった。

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