クールな御曹司の一途な独占欲
解決の糸口がつかめて、社長は納得した様子でこの本部長室を出ていこうとした。
私はその後ろ姿を引き留めた。
「待って下さい社長」
「ん?何だい?」
「・・・先ほどのお言葉、取り消していただけますか」
今回のことで、私は初めてずっとお世話になってきた社長に不信感を抱いた。
社長は器が広くてとても良い人だ。
でも社長という立場上、後を継ぐ息子である本部長のことには厳しく、いつも実力を軽視していることがある。
本部長がどんなに優れた人なのか、認めようとしないのだ。
これはきっと親子の問題だと思うけれど、私はどうしても訂正したいことがあった。
本部長は、嘘つきでもワガママでもない。
「・・・君がそんなことを言うなんて珍しいね」
でも社長はそんな私の言葉を聞いたとたん、嬉しそうに微笑んだ。
「社長?」
「分かった、取り消すよ。涼介は間違ってなかった。君が言うんだから間違いないよ」
私が欲しかった言葉を社長から簡単に引き出すことができて拍子抜けしてしまったが、ホッと胸を撫で下ろした。
このときばかりは社長の信用とやらをかっておいて良かったと思った。
本部長のことを信じてもらえたから。