クールな御曹司の一途な独占欲
episode5
本部長の気持ちを知ってから、さらに1ヶ月が過ぎていった。
その間、仕事についての会話しかしないのかと思いきや、今週の休日は何をするとか、どこのお菓子は好きだとか、本部長はわりとプライベートなことも聞いてきた。
─『キミが好きだよ。僕のことをそういう対象に思えないって言われたけど、僕はキミが好きだ』─
・・・あのときの言葉は、今も思い出すたびに体が熱くなる。
あんなに熱烈な告白を受けたのは生まれて初めてだった。
私はあれを断ったはずなのに、何度も何度も頭の中で繰り返しては、OKだったらどんな返事をしていたかを妄想してしまうことがある。
でも本部長のほうはあれが嘘だったみたいに、普通に接してくるようになった。
「香坂さん。明日ってキミの誕生日?」
その日の予定を読み上げた後、本部長にそう聞かれた。
「・・・そうです。よくご存知ですね」
「まあ、キミは僕の誕生日を祝ってくれたから僕もちょこっと調べたよ。キミの誕生日もお祝いしたいな。何か欲しいものとか、してほしいこととかあるかな?」
「そ、そんな」
「ごめんね。僕はほら・・・キミにフラれちゃってるからさ、さすがにサプライズで何かしてあげるわけにいかないんだよ。でも祝ってあげたい」
「・・・本部長・・・」
本部長がそんなことを言ってきたから、私に告白したことをなかったことにしたわけじゃなかったんだ、と、少しだけ安心した。
てっきりなかったことにされて、もうそのことには触れられないと思っていたのに。
そしてそれを嬉しいと思う自分の狡さにもウンザリとした。