クールな御曹司の一途な独占欲


抱えていたスケジュール帳をキュッと抱き締めた。

あの告白を断らなければ、明日はどんなサプライズが待っていたのかな。

どんなに素敵で夢みたいなことが起きたんだろう。

『あの告白を断らなければ』
そう考えることが、最近あまりにも多すぎる。


そんなこと考えてはいけないんだけど、私はどうしてもこの元の日常が歯がゆくて仕方ない。


「・・・そうですね、でしたら金曜日ですし、本部長とお酒が呑みたいです」

「お酒?」

「はい。前に社長にはよく連れていってもらってたんですよ。本部長は素敵なバーとか知っていそうですし、連れていっていただけたらなぁって」


本部長は少し困った顔をしていた。


私のほうも少し無理やりだったかもしれない。

社長に連れていってもらっていたのは居酒屋だったし、そこには副社長も同席していた。

彼らと行ったのは素敵なバーなどではない。

でももし本部長と二人なら、そんなところへ行ってみたかった。

もちろん本部長を困らせていることは自覚している。


「・・・香坂さん、一応聞くけど、それって僕と二人で・・・?」

「はい。ダメですか?」

「いや、僕はダメじゃないけど・・・香坂さんは嫌じゃないの?」

「嫌だったらこんなこと言いませんよ。でもご迷惑でしたら別の案を考えますが」

「・・・いや、大丈夫。僕のチョイスで良ければ連れていくよ」

「お願いします」


自分の気持ちが自然に風化していくのを待とうと決めていたはずなのに、本部長の気持ちもいつか風化してしまうと思うと嫌だった。

すごく卑怯な考えだとは分かっているけれど、特別な意味はないという前提なら許されるはず。

あくまでビジネスパートナーとしてなら・・・


それでも、明日のことを考えると胸が躍った。


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