クールな御曹司の一途な独占欲
私が秘書室に戻ると、隣からは楽しそうに電話で話す本部長の声が聴こえてきた。
やはりただの受付嬢との雑談じゃないか、とカチンときたが、私は特に咎めることはなかった。
本部長は社長の一人息子で、今までは他社の管理職として働いていたらしい。
本人に会社を継ぐ気はないため社長も自由にさせていたんだけど、高齢になって自分のこれからを意識したとき、やはり息子に会社を継いでほしい、そう思ったという。
私が社長の秘書をしていたとき、社長が息子に電話で説得をしているところを何度も見たけれど、彼はなかなか了承しなかった。
気落ちしていく社長を見ていられなくて、そのときひとことだけ、私は社長にアドバイスをした。
『継いでほしいという気持ちを伝えるだけではなく、今まで他社で頑張ってきた息子さんの努力も認め、誉めてあげてください』
そしたらしばらくして、彼は会社を継ぐために、本部長としてやってきたのである。