クールな御曹司の一途な独占欲
約束をしていた次の日はごく普通に仕事をこなし、ずっと本部長のそばにいたものだから待ち合わせなどすることもなく二人でエレベーターを降りた。
お店はマスターに口約束できるくらいに行きつけの場所があるようで、街のネオンに夢見ごこちになりながら歩いていく。
「ここだよ」
建物と建物の間にひっそりとあった階段を上がっていくと、そこがバーになっていた。
バーの名前はアルファベッド四文字だったけれど、何と読むのかは分からない。
「いい雰囲気ですね」
「マスター趣味いいからね」
テーブル席とカウンター席があり、私はカウンターを選び、本部長も微笑んで頷いた。
「ああ、森下さんいらっしゃい」
『マスター』という感じのオジサマが、本部長に細長いメニューを渡しながら声をかけた。
「お連れさま、随分と綺麗な方ですね」
私をちらりと見たマスターがそんなお世辞を言うので、慣れていない私は簡単に赤くなった。
本部長は苦笑いで返す。
「彼女は僕の秘書だよ。ただの、ね」
(・・・そう。ただの)
ただの秘書、か。