クールな御曹司の一途な独占欲
「でもそんなところも好きだと思っちゃうから、困るよね」
そう言って笑いながらまたグラスに口をつけた本部長に、私は胸が苦しくなった。
私も好き。
本部長も私をまだ好きでいてくれている。
それを何度も確認するなんて無意味なことをして、私は一体何がしたいんだろう。
本部長ならもしかして今までの人とは違って、上手く付き合えるんじゃないかって心の中で信じたいのかもしれない。
それで何度も何度も失敗してきたのに・・・
「本部長・・・どうしてそんなに・・・」
「僕はね、前の会社を辞めてこの会社に入ることに決めたわけだけど、最初は嫌で嫌で仕方なかったよ」
話題は急に変わった。
それは本部長が森下商事に来た数ヶ月前の、それでもつい最近の出来事の話だ。
私たちはこの数ヶ月に出会い、付き合い、そして別れと進展していったけれど、まだほんの短い間の出来事。
「・・・どうしてですか?」
「僕は前の仕事が好きだった。管理職だったし部下もたくさんいて、そこで一生やっていくんだって覚悟を持って仕事してたつもりだよ。辞めると決めたときはそれなりに落ち込んだ。・・・でもこの会社に来たとき、誰もそのことを分かってくれなかった。父親のもとで働けて幸せだ、将来の社長候補だ、やっと父を継ぐ覚悟ができたのか、ってね。何も知らない奴らが僕の今までを軽んじていた」
本部長は首を傾けて私を見て、優しく微笑んだ。
「キミだけだったよ。労る言葉をくれたのは」