クールな御曹司の一途な独占欲







帰り道。


「香坂さん、ほら、つかまって」


本部長と一緒にタクシーから降りてマンションのエレベーターへと向かいながら、もつれる足をどうにか一歩一歩前に出して歩いた。

本部長は何も言わずに支えてくれて、しかも私もこうして歩くこともままならないほど酔ってしまったから断ることもできなかった。


「本当にすみません、本部長・・・タクシー行っちゃいましたけど大丈夫ですか・・・」

「いいよ。今日は誕生日なんだからサ。僕は電車で帰れるから」


私はお酒に弱いわけではないのだけれど、あの一杯目のピンクのカクテルを飲んでからどうもおかしい。

何を飲んでも酔いを助長させるような感じで、あのマスターかなりアルコールをキツめに入れたんじゃないかと思う。

足ももつれるし、頭も働かない。


「楽しかったです、本部長・・・」

「うん。良かった。僕もだよ」

「本部長・・・」


頭が働かないということは、理性も働かない。

私はエレベーターで昇っている間、もたれるままに彼の腕にしがみついてしまった。


「香坂さん・・・、ちょっと・・・」

「はい・・・」


このまま向き合って抱き合ってしまえたらいいのに。

しがみついた彼の腕はそのまま、棒のように動かない。


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