クールな御曹司の一途な独占欲



本部長の腕に自分の胸が当たっていることにエレベーターを降りてから気がついたけれど、それももうどうでも良かった。

中学生ではないのだから本部長がそんなことを気にしているとは思わないし、酔っているから全てが許される、そんな感じがした。


「・・・」


本部長が黙り込んで、ついでにため息をつかれてしまったことが悲しくなって、私はさらに腕に絡まった。

あと数歩で部屋に着いてしまう。

そしたらもう本部長は帰ってしまうのかな。


「・・・ほら、着いたよ。鍵出せる?」

「バッグの・・・」

「バッグの?どこ?」


もともと本部長が持ってくれていたバッグを指差すと、彼はそれを私の目の前までブラリと持ってきてくれた。

溺れていきそうな記憶をたどり、部屋の鍵がどこにあるのかを思い出す。


「香坂さん?」

「バッグじゃなくて・・・胸ポケットでした・・・スーツの・・・」


ぼんやりとして見えないけれど、本部長は困った顔をしたと思う。

私の胸ポケットに、チャリンと音のする鍵がたしかに入っていた。

たしかバーで鍵を落として、どうせ帰ったら使うからとそのまま胸ポケットに入れたのだった。


「・・・なんでそんなところに入ってるの、まったく」

「すみません、開けてもらえますか、本部長・・・」

「か、鍵は自分で出してよ」


私は本部長にしがみついているため、両手がふさがっている。

どう見ても本部長が反対の手でするりと抜き取ってもらったほうが早いはずだ。


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