クールな御曹司の一途な独占欲
「ここまでで大丈夫だよね。ちゃんとベッドで寝るんだよ、風邪ひくから」
またドアを開けて出ていこうとする本部長は、座っている私の頭を最後にふわりと撫でてくれた。
「僕が出ていったら、忘れずに鍵をかけられる?」
「・・・分かりません。忘れちゃうかも」
「ハハ、忘れないで」
優しくてふわふわとする本部長の言葉。
このまま彼が出ていって、パタンとドアが閉められたら、鍵をかけるどころか裸足で追いかけていってしまう自信があるほどに寂しい。
「・・・じゃ、もう帰るよ。キミのこんな姿ずっと見てたら、僕も心臓に悪いからね」
本部長の手が離れていく。
先ほどまでポカポカと温かかった前髪がふっと冷えてしまい、なぜか泣きたいほどに切なくなった。
「・・・待ってください、本部長」
「ん?どうしたの?」
「もう少し、いてくれませんか・・・?」
まだ手の届く距離にあった先ほどまで私を撫でていた手を、私は絡めとった。
捕まえて、恋人のように指を絡ませた。
本部長の体がビクリと震えたのが、繋がっている手から感じられた。
どうしよう、止まらない。
「っ、香坂さん・・・」
「ダメですか?」
「・・・キミはちょっと酔いすぎてるよ・・・」
本部長は顔を背けた。
それでも手はそのまま、指を絡ませてはくれないけれど、そのまま繋がっていた。