クールな御曹司の一途な独占欲
挨拶だけでは済まなくて、松島さんは私のバッグを見て目を輝かせた。
「あれ?香坂さん、それドリンプのコースターじゃないですか?ポケットから見えてるの」
松島さんが指をさしたのは、バッグの外側のポケットに入っていた丸いコルク生地のコースターだった。
金曜日に本部長と行ったバーで記念にもらったものを、ここに入れたまま来てしまったのだ。
「ドリンプ・・・?」
「『DRNH』っていうバーのコースターですよね?」
「ドリンプって読むんですね、あれ・・・」
「私も行ったことあるんです。すっごいお洒落ですよね!お酒も美味しいし、デートには最適です。あらら?香坂さん誰と行ったんですか?」
さすが可愛くて愛想のいい受付嬢の松島さんは、ああいうところに男性と行くのかと感心した。
私の方は相手が本部長だったからイレギュラーだったというか、あそこに行くようなデートはスタンダードではない。
「友達ですよ。たまたま誘われて」
「あんなところに誘ってくれるなんて素敵なお友達じゃないですか~!」
「ま、まあそうですね」
テキトーな嘘を言うと、松島さんは何かを思い出したようにうっとりとし始めた。
「私もあそこに連れていかれたときは、ホント知ってる人は知ってるんだな~って思いましたよ。本当、さすが本部長だなーって」
───え?
「・・・本部長?」
「あっ、やっちゃった。ゴメンなさい、本部長と行ったってことはナイショにしててもらえますか?秘密にしてって言われてるので」
・・・なにそれ。