クールな御曹司の一途な独占欲


「やあ」

「おはよう、父さん」

「おはようございます社長」


社長は本部長に用があるのかと思いきや、私のほうへ真っ直ぐ歩いてきた。

先ほどまで読んでいた手元のスケジュール帳を、後ろから覗きこんでくる。


「香坂さんね、明日の午後空いてる?」

「明日、ですか?」


週間スケジュールを開いていてすでに空いていることは分かったけれど、さらに詳しい予定を確認するために日別スケジュールを開いた。


「空いていますね、3時からなら」

「うん、じゃあそのときちょっと私に付き合ってね、ほら、牧田くんの」

「あぁ・・・はい」


牧田くん、と社長が言ったところで、本部長の眉がピクリと動いた。

社長は本部長にはニコニコと笑顔を向けるだけで、何も説明はしようとしない。


牧田くんの、とは言ったけれど、別に牧田さんに会いにいくのではない。
土田社長が会いに来るのだ。

実は本部長が牧田さんを連れてくるなと土田社長に伝えた出来事のあとで、牧田さんから土田社長に直接謝罪があったらしい。

森下本部長の言うことは事実だから、もう自分は森下商事へは顔を出せない、と。

ずっと予定が合わずお流れになっていたけれど、その件で土田社長が近日こちらへ謝罪に来たいと常々仰っていたのだ。

この件の窓口は社長となっているから、社長宛に。

どうせ仲直りだの理由をつけてゴルフの約束をする気なんだろうけれど。


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