【完】『龍の倅(せがれ)』
そういった状況下のなか、秀宗は先に江戸入りを果たし、秀忠への挨拶も済ませている。
このとき。
秀宗は秀忠へ岡崎正宗の脇差を一振を献上している。
秀宗が手土産を持参する行動は、かつて秀吉がよく行っていたことから、政宗はそれをやめるよう叱責をしたことがあったのだが、
「何も持たずによう来たわと言われれば、それまでではありませぬか」
と秀宗は反論したことがあった。
相手を考えて土産を選び、それを渡すことが心である…という秀吉流のやり方のひとつであったらしい。