【完】『龍の倅(せがれ)』
ついでながら。
一度だけ、宇和島伊達家と仙台伊達家がぶつかったことはあった。
秀宗から数えて五代目の伊達村候(むらとき)のときに江戸城中の席次と扱いをめぐって、仙台伊達家といさかいになったのである。
このとき村候は名も政徳と改名し、宇和島伊達家が仙台の分家扱いをされることを幕府に抗議し、一時は参覲交代の年を幕府が一年ずらし、かちあわないようにしなければならなかったほどであったが、
「幕府は特にどちらが本家分家としてはおらぬ」
というような結論となり、村候に名を戻して和解したというような出来事があった。