【完】『龍の倅(せがれ)』
◆3◆
しかもそれだけではない。
「秀宗の子には偏諱を与えずともよい」
としている。
弟の忠宗が秀忠から一字をもらい、しかしそれは名で縛って忠誠心を誓わせることであり、信頼されてない証でもあった。
ひきかえ。
後に秀宗のあとをついだのは宗利で、偏諱はない。
これは、
「与えるまでもなく忠誠を尽くしている」
という幕府の意思表示でもあった。