【完】『龍の倅(せがれ)』
秀宗の父は独眼竜と畏れられた伊達少将政宗で、この政宗には逸話があった。
かつて太閤秀吉の唐入りの折、諸大名家に武具や馬具の御披露目、すなわち馬揃を命じたことがあり、そのときに黒と金でまとめあげられた伊達兵の軍装を見た京わらべたちは、
「あれぞ伊達者」
と誉めそやした。
この際に政宗の顔を見た、のちにいくさ場でまみえることとなった真田左衛門佐などは、
「あれでは京のおなごを、みな左京大夫(政宗の当時の官名)どのに取られるぞ」
とこぼしたほど、眉目の美しい武将として知られていた。
その子が、秀宗である。