【完】『龍の倅(せがれ)』

このとき随行していた小簗川十蔵は、

「宇和島ならともかく、江戸でかようなことが起こるとは」

と、見舞いに来た井伊直孝にもらした。

井伊は聞き逃さなかった。

「宇和島ならともかく、とはいかなることか」

小簗川は清兵衛の件を包み隠さず言上した。

「その山家清兵衛とやら、そこまでして宇和島を潰したいのか」

井伊はあきれた。



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