【完】『龍の倅(せがれ)』
宇和島伊達家の行列は東海道から伊勢を抜け、伊賀から奈良を経て難波津からは船になった。
ここで御酒下されがあり、小簗川はついホッとしたのか、
「いやはや、さすがに井伊さまは剛毅なお方で」
と、例の見舞いでの顛末を酒に任せ、冗談めかしてぽろっとこぼしてしまった。
これには、
「それは笑い事では済まされませぬぞ」
と声が上がり、たちまち秀宗の耳にも入った。
「十蔵、そはまことか」
これには小簗川も正直に吐かざるを得ない。
「掃部さまは斯様にお考えか」
秀宗は小さく言った。