【完】『龍の倅(せがれ)』
「こういう火急のための六万両ではないのか」
桜田は言う。
「しかしながら玄蕃どの、あの六万両は仙台からの貸付にて、手をつけずに返さねばなりませぬ」
「ならば初めから借りねば良いではないか」
「あれは青葉の殿が我が子を思わんが故に貸したもの、親の心に叛くは不孝にござろう」
「あの金はいわば紐付きで、仮に返せねば宇和島は取り潰しになると聞いておる」
これには座がざわついた。