【完】『龍の倅(せがれ)』
「清兵衛どの、そはまことか」
さすがに同席していた桑折左衛門までもが、桜田の圧倒的な弁舌にやや気持ちが揺らぎ始めていた。
「さような世迷いごと、桜田どのもいったい何の寝物語か分からぬが、何の証もないまま申すものではないわ」
ところが。
「しかしながら、殿が掃部頭さまと連名で差し立てられた文には、国入りをするまで騒ぐなとごさった」
さすがにこの手紙のことは清兵衛は知らなかった。