【完】『龍の倅(せがれ)』
しばらくの沈黙は重かったが、
「伊達家は活かして使うが得策かと」
末座から口を開いたのは、松平信綱であった。
「ここは一先ず折り合いをつけた上で存続を認めまする。そののち」
手伝い普請やらで忠誠を誓わせまする、と松平は言ってから、
「伊達家はそのあと、さらに何かしでかしたときに潰せばよろしゅうございましょう」
潰すのはいつでも潰せましょう、と松平は言い放った。
「なるほど」
土井は膝を打った。
「恩を売れ、と申すか」
「いかにも」
この頃から松平信綱は頭の回転が早かったようで、伊達家に恩を着せ、あとからその手を使えばよい、と深々うなずいた。