【完】『龍の倅(せがれ)』
◆13◆
そこで柴田外記が発案したのは、
「宇和島と仙台の家臣が望むのは、親子の融和である」
ということを示すといったものである。
「それには、われらだけが手を結んで携えただけでは殿は動かぬ」
と柴田は言った。
「ともに然るべき重臣に、手を携えていただかねばならぬ」
そこで左衛門どの、と柴田は、
「実はこたびの参覲(さんきん)にて、茂庭周防どのがひさかたぶりに江戸へ参られる」
宇和島の家中は一応、清兵衛のなきあとは桑折左衛門が筆頭となっている。
そこで全国にも名の知れた茂庭周防が手を組めば、政宗であっても容易に秀宗へ手出しはできなくなる。