記憶の彼方で、また会えたら
戸惑う天乃を気にもせず、光は天乃の前に屈み込むと、正面から彼女を見つめた。

「心配することないわ、私貴女のお母さんにすっごくお世話になったのよ。」

それにね、と光は付け足した。

「私には、貴女と同い年の息子がいるの。ほら、洸!」

光が振り返ると、後ろから恐る恐る少年が歩いてきた。

しかし、おばさんたちの好奇の目にさらされて怖気づいたのか、
ぺたんと床に座り込んでしまった。

光はそんな息子を愛おしそうに見つめると、膝の上に抱き寄せた。

「さんずいに光でコウ。よくひかるって間違えて呼ばれちゃうんだけど。
ねぇ、こんな親子だからね。貴女を明るい、光の当たる場所に連れていってあげる」

「ちょっと待って。光さんありがたいけどね。光さんこそお医者さんでシングルマザー。さすがに申し訳ないわ」

さっきまでグズグズ言っていた広美も困ったような声色で、隣のおばさんに言った。

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