君を探していた遠くの夏






学園の都市伝説。
10年次生である雪野 亜音莉の誕生日には必ず災いが起こる。


「未鈴〜おかえり!どうだった?」

「あったよ、3つでいいんだよね?」

肩までの髪を綺麗に切りそろえた少女が息切れしながら部屋に入ってきた。

手には茶色い紙袋を抱えている。

「そうそう、ありがとさん。未鈴走ってきたのね。そんなに急がなくても良かったのに」

笑いながら、紙袋を受け取った彼女は石田 真由。未鈴と同じ10年次生で、ルームメイトでもある。

部屋にすでに5、6人の生徒たちが集まっていて、中央のテーブルを取り囲んで楽しそうに話している。

真由が早速受け取ったアップルパイを切り分けていた。

良い香りが部屋いっぱいに広がる。

みんなもおしゃべりをやめて、視線をアップルパイに向けていた。

横で、ちょうど紅茶をいれおわった未鈴も嬉しそうにその様子を見ている。


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