after5はお手っ


「俺この間変なこと言って・・あのっ、周りにもケーキすげえ美味かったって言われました!」
「ありがとう。今日もその友達と来てるの?」
「ゼミが違う奴もいるけど、何人かは一緒で・・・」

チラッと後ろを振り返りヒロトくんを追うと、さっきの友人たちみたいに笑ってこっちを見ている顔ぶれがいる。
そこに向かって手で追い払う真似をしながら、ヒロトくんは私をじっと見つめた。

こうしてしっかり向き合うことはなかったからドキッとする。
私より少し高いくらいの身長だけど、肩幅は広い。
大学生活にも少し慣れたのか、最初の頃の少年さは抜けて穏やかな顔つきになっていた。

だけど・・

「ヒロト~やっぱ別行動すっか」
「あーうるさいっ!もういくっつーの!」

お友達にからかわれ、一気に顔を赤くして叫ぶ姿はまだまだ子どもみたい。
思わずクスッと笑うと、ヒロトくんは恥ずかしそうに口を尖らせ、それから私の名前を呼んだ。

「瀬野由枝さん、でしたよね」
「うん」
「・・・またお店行きます。絶対」

ぎゅっと自分の拳を握って、まるで一世一代の宣言みたいに息を込めて言われる。
待ってるね、と返すと、飛びきりのくしゃっとした笑顔が見れた。

思えばあの時から、私はヒロトくんの純粋な人柄に惹かれてたのかもしれない。


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