after5はお手っ


相変わらず美味しいご飯を食べ終わり、今度は何もないテーブルの前で二人、並んで座る。
時計はそろそろ21時を指そうとしている。
こんな時間に、二人きりでいたことはもちろん、それが私の部屋だったこともない。

他愛ない話をしながら、内心はすごくドキドキしている。
この後、ヒロトくんはどうするんだろう、私たちはどうなるんだろう。

少し、ううん、結構な覚悟をもって話に相槌を打つもんだから、内容はほとんど上の空。
そんな考えが伝わったのか、ヒロトくんは「ご主人様・・」と掠れた声で言い・・・

「帰りますね」

と立ち上がった。

「えっ、え?あ、うん」

子犬がオオカミに変身、なんて都合の良い展開は訪れず。
極限まで張りつめていた心臓が、途端に穴が開き空気が漏れ、ひゅるひゅると萎んでいく。
漏れていった空気の中には、無意識に抱いていた言えない期待が込められてたのか、返事をする声は上ずっていた。



帰っちゃうの?なんていう勇気はない。
まして、いてもらったところで何をしてもらうかなんて。

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