after5はお手っ


夕方になって駅までヒロトくんを迎えに行き、今日の材料を買いにスーパーに寄る。
隣に並ぶヒロトくんは少しはしゃいだようにカートを押していた。

「私服だと、大学の頃みたいですね」
「そうかな?卒業してからそんなに経ってないよ」

それが長いんすよ、としみじみ目を閉じる。
あの時はほとんど毎日一緒にいたのに、先週までは声も聞かない日が続いてたんだ。
私自身も余裕がなかったけど、ヒロトくんも相当モヤモヤしてたみたい。
思い返してるのか、瞼がぴくぴくしててちょっと可愛い。

夏が近いせいか、2人で家に入ることには汗をかいていた。
窓を開けて風に吹かれながら、夕飯を作る。今日は私も材料を切るお手伝い。

って、なんだか私の方がヒロトくんの指示に動く犬みたい。
控えめに「これ切ってもらえますか」とか「混ぜてもらっていいですか」と聞くヒロトくんも人柄が出ていて、なんだかやけに楽しくなってくる。
しまいには、ご主人様、ご機嫌ですねなんて言われるまでに。

さっきのヒロトくんが言ったように、あの頃の私たちのやり取りみたいで、嬉しかった。


< 22 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop