after5はお手っ
次の日、ヒロトくんがお店からもらってきたと言ってワインを開けてくれた。
もちろんヒロトくんはまだ飲めない。あと少しの辛坊ねと髪を撫でれば聞き分けよく頷く。
そういえばゼミのコンパで無理にお酒を勧められてもヒロトくんが手を出すことはなかった。
ご両親の育て方が良いせいか、大人ぶって羽目を外すことはしないみたい。
ワインの味は最近学んだという新メニューによく合い、ほろ酔いで話も弾んでいく。
ニコニコと笑うヒロトくんの隣で、私は礼美から言われたことを切り出そうかどうか迷っていた。
私たちはこのままペットと飼い主なの?恋人同士になることはないの?
ヒロトくんは、男として私に触れたくならないの?
「ご主人様?もうおなかいっぱいですか?」
考えては押し黙る私を覗き込む顔が可愛くて、つい手を伸ばす。
もっと深くまで触れたいと焦がれていても、こうして頭を撫でる時に胸を占めてる気持ちはやっぱり、和みとか癒しなんだ。
ペコを抱きしめながらウトウトするあの気持ちよさに匹敵する。
誤魔化すように「ちょっと眠いかも」と答えると、危ないと思ったのか私が持っていたグラスをそっと取り上げ、テーブルの真ん中に置く。
出来た犬だなあ。今日見た忠犬の姿がまた重なった。
アルコールのせいもあって本当に眠くなってくる中、ふと考える。
ヒロトくんの中では、今、どういう感情なんだろう。
いい子だねとただ頭を撫でられる、それを満足に感じてるんだろうか。
ワインはもう半分も残っていない。
最悪、酔っていたからと言えるかもしれない、と最低の事を考えながら、自分の気持ちを知るためにも、ある行動に出た。