after5はお手っ
このまま時間が止まればいいという願いが、別の意味を伴って叶ってしまった。
瞬きもできずに固まる私の腕を、ヒロトくんが優しく掴んで抱き起す。
背中にも腰にも回らない掌を、無意識に追いかけた。
「ごめんなさい!つい甘えちゃって」
「う・・ん、ううん」
「冷めちゃいましたね。これ残り冷凍にしときましょ」
何事もなかったように、普段通りのヒロトくんが開いたお皿を片付け始める。
なんとか頭を働かせ、私もいつも通りの言葉を探した。
「ありがと、ヒロトくん、ホントにイイ子だね」
「へへー、わんっ」
ああ、やっぱり。
ひとつになりたいなんてこと、ペットの彼は望んでなかったのだ。
嬉しそうに肩をすくめるわんこを見て、零れそうになった涙を必死に飲み込む。
はっきりと突き付けられた事実に、心が完璧に折れた。
今日ばかりはいくら愛しいこの子に慰められても懐かれても回復しそうにない。
むしろ痛みは増すばかり。
それでも、噛みつかれたわけでもないのに穴が開いた心を、主人の威厳としてひた隠しにしなくっちゃ。