after5はお手っ
「ベッド、連れてって・・っ」
礼美の言う誘い方には程遠く、逆に駄々をこねる子みたいにねだる。
しばらく間が空いた後、身体が浮く感覚がした。
抱き上げられたことに一瞬高揚を感じたけど、答えはまだ出ていない。
だからヒロトくんの顔を見るのが怖くて、俯いたままベッドに下ろされる。
離れていく身体を追うようにしがみつき、ここにいてとねだる。
冷静な自分が、それを呆れた顔でみて・・
「ここにいるから大丈夫ですよ」
ため息をつく、ほらやっぱりねという顔で。
ヒロトくんは飼い主を慰める犬そのものに、涙を舐めた。
ずっと願っていた、貴方からの触れ合い。
でも違う、こんなんじゃ全然足りない。私は今、噛みついて欲しいんだ。
ぶつけるようにキスをした。戸惑うヒロトくんを力いっぱい引っ張って、自分の上に倒す。
いきなりの行動に、驚いて動けないようだったから、その隙に精一杯しがみついた。
「名前で呼んで」
「え・・」
「もう、やめる・・ご主人様なんか、やだあ」
言葉にしたらもう後に引けず、あとからあとから涙が溢れてくる。
本当はずっと引っ掛かりを感じてた、呼びかた。
こんなにそばにいるのにあの頃よりも距離を感じさせる。