名もない花に贈る
*プロローグ
「なぁ、あんた!」
顔が良く見えない距離から私は声をかけられた。その声に一瞬胸が高鳴ったのを覚えている。
「〝サキ〟に〇〇がブスマヌケって言ってたって言っといてよ!」
けど、すぐ叶わぬ恋だとわかった。
「りょーかい!」
サキはクラスで一番の美女。しかも人当たりもよく、優しい。
この時、知らぬ事だと思わずちゃんと名前を聞いてればよかった。
今になってこんなに苦しむと思わなかったんだ。