マドンナリリーの花言葉

まだ生き生きと咲き続ける花を花瓶からだし、後で捨てるために一ヶ所にまとめる。他のメイドが数人で花瓶を洗い、次々と花を活けていく。下っ端であるローゼにはそこは任されないらしい。


「あなたは花を捨ててきてくれるかしら」

「はい」


ゴミは庭師によってまとめて焼かれる。焼却用の炉があるので、そこまで持っていけばいいのだ。
ローゼは大きな野菜袋にそれをすべて入れ、持ちあげる。
よたよたしながら歩いていると、使用人の男性が声をかけてきた。


「やあ、新入りの子だよね。重そうだね、持ってあげるよ」

「平気です。私の仕事ですから」


ローゼの存在は、来た当日に屋敷中に知れ渡った。人形のような美しい娘の登場に、独身の若い男の使用人たちが色めきだったのは言うまでもない。
こぞってローゼを手伝おうとしてくるのだが、ローゼにとってはせっかく与えられた仕事を奪われるようなもので困りごとでしかない。なかなか立ち去ってくれない男を振り切るように早足で歩いていると、咳払いが聞こえた。


「あ……、ディルク様」


男の声に、野菜袋で前がよく見えていなかったローゼは袋を落とす。すると開けた視界に、冷めたような目で男を見つめるディルクが見えた。


「ヤン。君の仕事は女の尻を追いかけることじゃないだろ? さっきトマスが探していたよ」

「あっ、すみません。すぐ参ります」


男は慌てて歩いて行った。
ディルクは呆けてみているローゼに不愉快そうな顔のままポツリと告げる。


「……エミーリア様の言うとおりだな。困りごとだらけみたいじゃないか」

「あの」

「気がない男ならばきちんと断ればいい。……焼却炉の場所はわかるのか?」
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