マドンナリリーの花言葉
意図的か偶然は分からないが、エミーリアは交渉の場から自分が閉め出されないような状況を作り上げたわけだ。
それは、ローゼを守るという点でみれば大きい。
フリードが頭の上がらないギュンターに対してだって、エミーリアならば突っぱねることができる。無理な提案に対してNOを言いやすい環境であると言えるだろう。
それをすぐに察知したからこそ、フリードもそれに乗ったのだ。
ディルクだって、冷静になればわかる。この提案は、ローゼを守るためのものに他ならないと。
「……ありません。すみません、言い過ぎました」
フリードは上目遣いにディルクを見上げると、楽しそうに笑った。
「お前から余裕がなくなる姿というのは案外おかしいもんだな。本人の気持ちを尊重しろというならば、ディルク、お前が聞いて、説得してきてくれ」
「しかし……」
「俺の側近に迷いがあるようでは困る。さっさと行って来い。命令だ」
ニヤニヤといつもにもまして余裕の態度を見せるフリードにムッとして、ディルクはついつい、子供の頃のように不満の態度をあらわにした。
「……分かりましたよっ」
荒々しい足音にフリードは思わず笑いだし、窓辺に向かってひとりごちた。
「ローゼか。……意外な相手に落ちたもんだなぁ」