マドンナリリーの花言葉
「……この女性が見つからなかった場合、ローゼ嬢はどうするんだ?」
ギュンターは釘を刺すつもりで問いかける。
本人が農家出身のメイドであり、愛人にするならば会わせられない、というフリードの決意に似た言葉をギュンターはそのままクラウスに伝えた。
しかし彼は真面目に取り合いもせず、「まずは連れてきてくれ」とだけ返事をしたのだ。
腐っても第二王子だ。ギュンターは昔なじみの気安さから進言はできるが、言い張られれば従わざるを得ない。
「さあねぇ。正直会ってみないと分からないね。君は俺がこの肖像画の女性に恋をしていると思っているんだろう? 確かに、この絵にはすごく惹かれるよ。だけど、人間だったなら分からない。俺は今まで、美術品に感じる以上のエクスタシーを人間に感じたことはないからね。この絵から感じる衝撃を本人に感じたならどんな手を使ってもモノにするけれど。そうでなければ、別に嫌がるものを無理強いはしない」
「その場合、婚姻相手はどうするんだ。国王様もさすがにそろそろおかんむりだろう」
「まあな。……どうしてもという女性を見つけられないならば、形ばかりでも妻は必要だろうね。ただ父上の言うことを聞くのも癪だし、どこかから変わった娘でも連れてきたいところだけど」
「今日会わせる娘は、メイドだからな。火遊びだけはするなよ」
「分かっているよ。……そうそう、クレムラート伯爵から花が届いたんだ。なかなか気の利く男のようだな。庭園に咲く薔薇を飾ってほしいと、後は薔薇を入れるだけになっている、グリーンとカスミソウのアレンジメントが入っていたらしい。彼ともじっくり話してみたいと思っている」