マドンナリリーの花言葉
「義兄上。クラウス様にご挨拶したいのですが」
「ああ。そうだな。夜会が始まったら紹介しよう。まずは会場のほうへ向かってくれ」
ギュンターは一行を従僕に託し、再びクラウスの前に戻る。
「意外としたたかなんじゃないか、君の妹君は。誰だい? 深窓の令嬢とか言っていたのは」
「結婚してすっかり我を出すようになったようだよ。それよりクラウス。かのメイドと会うのはどうやら会場でとなりそうだ」
「ふふん。妹君がお目付け役として付いているというわけだね。どうやら俺は君の妹君にそうとうの女たらしだと思われているらしい」
「だろうな。……まあ、遊び人だとは思われてるよ、間違いなく」
「下手すれば不敬と言われてもおかしくないところ、よくクレムラート伯爵も許可したな」
クラウスは楽しそうに笑う。ギュンターは内心でため息をついた。
今のどう転がるのか分からない状況を相当に楽しんでいる顔だ。クラウスは王子として生きるには遊び心がありすぎるのだ。
無難な相手と結婚し、プライベートにおいては波風を立てず、国を安寧に導くために生きようとするのが王族の務めではないのか。